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“Report” FromASAHI N0:27
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2010.11.17 "Report"from Asahi

"Report" FromASAHI N0:27

"Report" from ASAHI No:27 「携帯電話」(2005年1月号)

 

 「ヌグ(誰)?」。受話器の向こうから、疑うような声音が漏れてきた。「すいません。日本の朝日新聞ですが、ぜひお会いしたいと思って電話しました―」

 10月下旬、私は大汗をかきながら、朝からずっと会社の電話にしがみついていた。 

 最近、火を噴き始めた米軍の再配置問題。もともと軍の財政圧縮が目的だったが、同時多発テロや、イラク戦争なども重なり、どんどん内容が変わっている。40万人とも言われる海外派遣軍がどう姿を変えるのか。当の米国人たちもまだよくわからないのが現状だ。

 そこで、11月初めに、日本より先に米国との協議が始まった韓国に取材に行くことにした。が。そこからが問題だった。数ある取材のなかでも軍事分野は壁が高い。とりわけ現在進行中の話を、外国の新聞社が取材できるものかどうか。

 6月に取材に出かけた時は散々だった。日本の韓国大使館を通じて申請を出したら、紹介してくれたのはたった1人だけ。現地支局は多忙を極めており、応援は望めそうも無い。

 切羽詰って、ゲリラ戦を挑むことにした。韓国社会の特徴の一つに「電話文化」がある。政府高官の名刺にまで、携帯電話番号が刷り込んである。以前、韓国大使館員が「日本はプライバシーが守られていて良いですねえ。韓国では携帯電話の番号を教えないと、記者が怒り出すんですよ」と苦笑していた。

 これ幸いと、まず知り合いから、国防部や外交通商部の官僚、軍人、安保研究家などの名刺を収集した。さすがに「いきなり電話するのは、やっぱり失礼では」と思い、自分の取材の趣旨を、英語とハングルに要約して、メールで送った。

 暫く待ったが、30人ぐらいに送って返事が来たのは1割ちょっと。しょげていると、知人の韓国専門家が笑った。「大丈夫。電話すればみんな会ってくれる」

 本当にうまく行った。今度の成功率は8割以上。国防部の高官は「じゃあ、昼ごはんでも一緒に食べるか」と誘ってくれた。空軍の将軍は忙しい日程をやりくりして、「朝7時に食事しながら話そう」と言ってくれた。多い日で一日8人。取材メモはどんどんたまった。

 取材の合間、日本大使館の職員と焼肉を食べながら、意見交換をした。だいぶ酔いが回った頃、大使館員氏が煙の向こうから「牧野さん、国防部に取材に行かれたでしょ」といたずらっぽく囁いた。「えっ、何で知ってるんですか」とどぎまぎしていると、彼は「実は、補佐官が慌てて大使館に電話してきたんです。"牧野って誰だ"って。まあ非公式に会うなら、大騒ぎしない方がいいなって思って、知らない振りをしておきました」と教えてくれた。

 ニュースソース(情報源)はできれば実名で載せたい。でも、今度の記事には、「韓国政府高官」とか「韓国軍関係者」とか、ちょっとぼかした表現が多くなりそうだ。でも、それでより深みのある記事を提供できるのなら、読者の方にも許してもらえるかな、と思う。

 昼食をご馳走してくれた国防部の高官からは先日、直筆の英語で丁寧なグリーティングカードが届いた。

 

朝日新聞社 牧野愛博