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テレフォン説法第三回目
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2007.04.24 テレフォン説法

テレフォン説法第三回目

テレフォン説法第三回目(昭和57年三月)
 
<ひとり往くべし>
 
 テレフォン説法第三回をお送りします。
釈迦は弟子達に申しました。
 
「汝ら一つ道を二人にて往くこと勿れ  
           犀の如く一人ゆくべし」
<ひとり往くべし>
 これは釈迦が弟子達を伝道のたびに送り出したときの言葉だといわれます。犀という動物は、群れをつくらない動物のようであります。そこで釈迦は早速その犀を例にとって「犀の如くひとり往くべし」といわれました。
 この厳しい人生行路に於いて、一人旅は淋しく、また不安なものです。そんな時に、先ず頼りになるのは「道づれ」であり同行者であります。
 しかしいつまでも人に頼っていては、独自の人生を切り拓くことは出来ません。淋しいけれど、又つらい事があっても、自分の個性を生かし、独自の天地を開拓してこそ、歴史の残るような大仕事も生まれるし、人間としての生き甲斐も感じることでしょう。
 
<独創力をもて>
 米ジョージア州立大学の教授は「日本の学生はアメリカの学生に比べて、想像力や独創性に欠けている」と言いました。よく世間では「アメリカ人が発明して、日本人がそれで金儲けをする」といわれますが、先の高度成長もこんな傾向が全く無かったとは言い切れません。
 明治以来、欧米に追いつき追い越せで、模倣と企業化の点では天才的な日本人です。いまや日本製の自動車やテレビはドル稼ぎの優等生になってしまいました。ただ、問題はこんにちの日本人が繁栄の陰にかくれて、或は学校のテスト制度に災いされて、その個性や独創能力を低下させては大変だという事です。
 北国の小学校で、先生が生徒たちに「氷が溶けると何になるか?」と質問しました。九十九%の生徒が「水になる」と答えた中で、ただ一人だけ「氷がとけると春になる」と答えた生徒がいました。こうした発想も大切に育てたいわけですが、○×式の画一教育では、残念ながら×にならざるを得ません。
 それと同時に、現代の若者たちがマイホーム主義だけに固まらず、高い目標をかかげて、その達成のために勇気と情熱を傾けて悔いないという気概を養いたいものです。
<一所懸命>
 今年の春ごろ「天平の甍」という映画を観ました。井上靖の小説を映画にしたものですが、日本への渡来を請われて、唐の僧鑑真が、ためらう弟子の僧たちを前にして、「これは仏法のためなり。何ぞ身命を惜しまん。諸人ゆかずんばば、われ即ちゆかんのみ」と決意するシーンは時代を超えて私共の胸を打つものがあります。
 十二年という永いあいだ苦労して、やっと日本へ辿り着いた時、彼は両眼を失明し盲目となってしまいました。それにしても千二百年前、粗末な船と幼稚な航海術で、生命の危険も顧みずにホンの若い留学僧たちを唐にかりたてた情熱の烈しさ。故国へは二度と帰れぬと覚悟しながら伝法の大儀のために日本へ渡った鑑真和上の志の深さ。それをしみじみと思います。
 現在は地球のどこへでも一日で飛べるようになったが、これだけの目的と情熱をもった人間が、果たしてどれだけいるでしょうか。
 
 「汝ら犀の如くひとり往くべし」と解いた釈尊。「諸人行かずば、われ即ちゆかんのみ」と叫んだ鑑真。その精神の高さ、きびしさは、かつて「若者よ大志をいだけ」ボーイズビーアンビシャス!と叫んだクラーク博士の言葉にも通じるものがあると思います。
 どうもありがとうございました。