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“Report” from ASAHI第八回目
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2007.12.05 "Report"from Asahi

"Report" from ASAHI第八回目

“Report”From Asahi No:7 「前例踏襲」
 
 イラク戦争が始まった。世界の各地から、米国の行動に対する様々な声が聞こえてくる。支持する英国やスペイン、反対するフランスやドイツ。日本は、と言えば、予想されたとおり「米国支持」である。
 何も支持が悪い、ということではない。イラク戦争が終われば、次に国際問題の焦点になるのは北朝鮮だ。先月、都内で会った米政府関係者によれば、米国では現在、朝鮮半島にいる在韓米軍の後方撤退シミュレーションや北朝鮮による日本本土攻撃に伴う被害予想シミュレーションなどが、盛んに行われていると言う。「北朝鮮から身を守るためには、米国の力がどうしても必要」というのが日本政府の論理であることは、朝日新聞が繰り返し報道している通りだ。
 しかし、イラク戦争で「米国支持」を決めるまで、一体どれだけの議論と検討がなされたのか、はなはだ心もとない。
 あっさり「支持」と言わず、「やむなく支持」とか「しぶしぶ支持」とか言えなかったものか。
 日本政府の場合、こうした政治判断が日常的に求められる場所として国会(政府答弁)がある。私が政治部の外務省担当をしていたころ。国会開会中となると、午後五時ごろ、役所のなかにアナウンスが流れる。曰く、「日米安保課と北東アジア課とロシア課は、国会答弁作成のために待機せよ」といった具合に。その日の昼間、役人たちは翌日に国会質問に立つ野党議員の事務所を駆けずり回って、質問内容を聞き出してくる。「〇〇党だけ、なかなか教えてくれなくて」というぼやきを聞いたこともある。
 そして深夜23時ごろ。そうした部署の課長たちと食事をしながら取材をしていると、頻繁に彼らの携帯がなる。部下たちが作成した国会答弁原稿のチェックを求めてくるのだ。「うんうん、それでよし」、「一度役所へ戻る」など、指示を出す課長たち。翌朝には、この答弁書を各大臣のもとへ届けなければならない。首相の勉強会は朝6時には始まる。
 こうして未明の2時3時まで続く原稿作成現場(役所)の建物脇に、上客待ちのタクシーが長い列をつくる。
 政治家不在、議論不在の作業のもとでは、「前例踏襲」も作業の大きな助け舟になろうか、というものだ。難しい問題であればあるほど、「とりあえず前回の答弁を参考にして」という思考方式に陥りやすい。こうした役人たちの仕事に乗っかった政治家たちに、どれほどの見識を期待できるのか?
 ある首相は、後任の首相に対して「自民党総裁と日本国首相は、米国に対して賛成するしかないのだ」とのたまったという。
 米国の核の傘に入り、在日米軍の指揮系統に自衛隊が組み込まれ、そのおかげで経済的恩恵を多大に受けてきた日本は、現実問題として米国と歩を共にしていくしか選択肢がないのかもしれない。
 にしても、だ。米国だって間違えることがあるだろう。数年前、米国大統領を取材した同僚によれば、ブッシュ氏は興味のない質問には落ち着かず、軍事とか安保とか好きな話題になると突然シャンとする「危ないヤツ」だったという。
 いつかは、米国に対して「ノー」と言わなければならないときが来るかもしれない。「前例踏襲」では済まなくなる日が来る。大多数の人はそう心配している。細川護熙元首相が日米関係を「大人の関係」に例えて喝采を浴びたのは、紛れも無く、そうしたフラストレーションを反映していると思う。
 政治部の記者として日本の重要政策を取材したとき。素晴らしい考えを聞き、胸を躍らされた相手が役人ばかりだったという現実は、今も変わっていない。私が抱いた寂寞感が解消される時期が、この国に本当にやって来るのだろうか。