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“Report”FromAsahi第七回目
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2007.11.18 "Report"from Asahi

"Report"FromAsahi第七回目

“Report” from Asahi No:6「自転車」
 
先日、朝日新聞社が業務提携している韓国・東亜日報社を訪れた。東亜日報は創刊83年を迎える名門新聞社で部数は200万部を超え、朝鮮日報、中央日報と並ぶ「メジャー3紙」と呼ばれる全国紙だ。数ある朝日新聞の提携先のなかで最も関係が深く、記事の交換以外に共同世論調査や記者交流、シンポジウム共催などを行っている友好社でもある。
 ほぼ4日の間、同社幹部と意見を交換したが、30代後半の中堅販売局員との会話が印象に残った。私が「東亜日報の紙面を紹介するチラシかパンフレットを見せて欲しい」と頼むと、その局員は「そんなものはない」と言う。「それじゃ、他紙と差別化できないでしょう」と食い下がると、彼はあっさりと「紙面で選ぶ人なんて韓国にはいない」と答えたのだった。
 「東亜日報は伝統的に反権力の名門新聞」という固定観念があった私は、この一言で「うーん」と黙り込んでしまった。「東亜日報に限らず、韓国の新聞社は自転車や冷蔵庫、カーペット、扇風機などを持ち出して新聞拡張に精を出しているという。ここまで紙面宣伝を無視するとは。なぜ、そうなったのだろうか?」
 いろんな人に話しを聞いてみたが、どうも韓国社会における「新聞の権威」に原因があるんじゃないか、という結論になった。「新聞はウソを書く」「新聞は権力におもねる」「新聞はぶれる」-。こういった世間一般の認識が、「どんな新聞もみーんな同じ」という結論を導いているのではないだろうか。
 東亜日報は金大中前大統領の出身地で知られる全羅道(韓国の西半分の地方)を根拠地にしている。全羅道は農業が盛んな地方だが、人口はそれほど多くなく政治的に不遇な場所とされる(光州事件も全羅道で起こった)。工業が発展し、歴代大統領を輩出した慶尚道(東半分の地方)にいつも政治的主導権を握られっぱなしだった。このため、東亜日報は自然と権力批判報道が売り物になったといわれる。東亜日報の主力読者に低所得層と知識人が混在しているのもこのためだ。
 ところが、当初支援した金大中前大統領が「権力と癒着するマスコミ」批判を始めた。政府が各新聞者への税務調査まで始めると、東亜日報は態度を変え、猛烈な「反金大中キャンペーン」を展開した。金大中氏の後継者で新世代から支持を受けたノムヒョン新大統領の批判も猛烈にやった。韓国人の知り合いの多くから「東亜日報の考えがわからない」というぼやきを聞いた。
 こうした政治的な思惑と行動は、別に東亜日報に限った話ではない。中央日報社は三星(サムソン)財閥をバックにしているし、韓国の政治記者の半数は政治家志望と言われている。私が韓国に留学していたころ、政治記者の一人が政治勢力と手を組み、反対勢力の追い落としのための怪文章を作って逮捕されるという事件も起きた。韓国人の多くは「新聞は権力に弱い」「ウソも書く」と思っているようだ。
 要するに、新聞に「(世間の代表という)権威」がないのだ。韓国人は簡単に新聞を見捨てる。かつてメジャー紙だった韓国日報や京郷新聞は簡単に没落してしまい、部数低迷に苦しんでいる。多くの新聞記者がベンチャー企業に転職して、業界から流出している。
 こうした信頼感のなさが新聞の紙面力を弱くして、紙面を重視した販売ができない状況に追い込んでいるのだと思う。
 では朝日新聞はどうか?幸い、世論調査によれば新聞に対する日本人の信頼度は非常に高く、8割以上の人が「新聞は真実を書く」と信じてくれている。なかでも朝日新聞に対する信頼度は高く、これが企業や役所、教育関係者などに購読者が多い決定的な理由になっている。
 「自転車より紙面」。ソウルの夜、焼酎を飲みつつ、そんなことを考えた。