佐野新聞店
地域密着型の新聞店|沼津市の佐野新聞店
テレフォン説法第五回目
Blog

  • Category

    カテゴリー


  • Archive

    アーカイブ

2007.09.12 テレフォン説法

テレフォン説法第五回目

テレフォン説法第五回目
(昭和五十七年五月)
 
 テレフォン説法第五回目をお送りします。
 今日は、日蓮上人が文永十一年に書かれた手紙の一説をご紹介します。
 「一人の心なれども二つの心あれば、其心たがいて成ずる無し。百人千人なれども一つ心なれば、必ず事を成ず。日本国の人々は多人なれども異体異心なれば、諸事成ぜんことかたし。日蓮が一類は異体同心なれば、人々少なく候へ共大事を成じて云々。」
と続いています。日蓮の面目躍如たる文面でありますが、これは古くから「異体同心事」という名前で呼ばれている書簡です。
 「一人の心なれども二つの心あれば、其心たがいて成ずる事なし。」
 事を成すに当って、私たちは右せんか左せんか迷うことがあります。結果をよくしたいと思えば思う程、この迷いは深くなります。あなたにそういう経験はありませんか。ぎりぎりまで迷って止む無く一方を選びつつ、なお他方に心ひかれる―という事もあるものですが、これでは選びとった方向に対しても全力投球ができず、十分な成果は望めません。だからといってヘボ将棋のように軽卒に判断して駒を進めて良いわけはありません。将棋ならばどちらへころんでも大したことはありませんが、人生では取り返しのつかない事になります。昨今のような複雑怪奇な社会状勢で、先を読むことは大変むずかしい訳ですが、さりとて頭の中で考えが二つに分かれていては困ります。
 狼とあだ名されていた千代の富士が初場所で優勝しましたが、彼は左肩を七回も脱臼して足踏みをしたことがあります。それ以来彼はダンベルを百回以上、腕立て伏せを二百回毎日毎日繰り返してこの弱点を克服したといいます。勝利の蔭には血のにじむ激しい稽古があったわけです。先ず自分に打ち克つ事によって勝負に勝つ。何事であれ勝利者となるためには、一点に立って激しく回転するコマのような集中力と実行力がなければ、事を成就することはできません。
 「百人千人なれども一つ心なれば、必ず事を成す」日蓮はその例として、殷の紂王は七十万騎を率いて戦ったが、異体異心のためいくさに敗れた。周の武王が手勢わづかに八百であったが、異体同心のため勝つことができたと言っております。従業員何千人の大会社でも、心がバラバラな「烏合の衆」では業績は上がりません。人数は少なくとも、少数精鋭の「和合の衆」であってこそ、社運も隆盛に向かってゆくでありましょう。
 「日本国の人々は多人なれども異体異心なれば、諸事成ぜんことかたし。日蓮が一類は異体同心なれば人々少なく候へ共、大事を成じて一定法華経ひろまりなんと覚えて候」こう申しております。人間はみな別々の存在である以上、十人十色の心を持つのは当然ですが、大目的達成のためには各人が小さな自我を捨てて、水と魚の関係のように異体同心となる必要性を強調しています。大勢の心を、「一つ」にまとめることが上に立つ者の役目であり、それには月給以上の人生観、信念が必要ではないでしょうか。日蓮上人のこの一文は、現代においても味合うべき文章と思います。ありがとうございました。


 
次回は第六号(昭和五十七年六月)をお送りします