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”Report” FromASAHI第十二回
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2008.03.12 "Report"from Asahi

”Report” FromASAHI第十二回

“Report” From ASAHI
NO:11「悪代官」
 
 「ここ数ヶ月でとても有名になった1人は?」と言えば、日本道路公団総裁の藤井治芳氏だろう。ふだん、政治に興味のない私の妻でさえ名前を知っている。写真週刊誌やらテレビのワイドショーやら、この人が取り上げられない週はない。「道路公団の民営化を邪魔する人」「気に入らない部下を左遷する人」「政治家と酒食にふける人」と、まさに悪口のオンパレード、“現代の悪代官”といった様相だ。
 実は、この構図は昨年来、民営化にかかわる登場人物たちが繰り広げてきた「得意のパターン」でもある。
 道路公団の民営化問題は「正義の味方VS悪代官」という構図で、これまで国民の皆さんの耳目を集めてきたのだ。あるときは、民営化を拒み、採算度外視で道路を造りたがる自民党道路族VS構造改革を唱える小泉首相。またあるときは、国民の期待を背負った作家の猪瀬直樹氏ら道路関係4公団民営化推進委員会の“革新派委員”たちVS推進委を穏便に終わらせようとする今井敬委員長ら“保守派委員”たち、という構図だった。そして今は「悪代官」藤井総裁、である。
 藤井総裁は批判されても仕方のない、めちゃくちゃなところがある。ほとんど記者会見に出てこない。一度、民営化推進委員会を傍聴に行ったら、藤井総裁が出席していた。「こりゃあ取材しなくちゃ」と、休憩時間になるまで、廊下で待ちかまえた。ところが、「さぁ出てきた」と思ったら、藤井氏は周囲を5,6人の部下に囲まれ、脱兎のごとく裏口のドアから走り去ってしまった。このほか推進委や国会での答弁も、金きり声をあげるような感じで、氏をよく知る人に言わせると「昔と全然変わった」「感情的になっている」のだそうだ。
 藤井氏が「悪代官」になればなるほど、一時目立たなくなっていた道路公団問題も脚光を浴び始めた。小泉首相も、「道路民営化問題を自分の総裁選の公約に入れる」と、大張り切りだ。
 8月に入った今、首相官邸からは藤井氏の更迭をにおわせるような様々な発言が聞こえてくる。更迭時期について「内閣改造時」とか「総裁選時」とか、したり顔で解説してくれる人が永田町のあちこちにいる。でも、藤井氏を替えれば、それで済むほど、問題は簡単なのだろうか。そこには様々な人々の様々な思惑が渦巻いている。
 二年ほど前、藤井氏はむしろ、自民党の抵抗勢力と戦う側にいた。党道路族の地元の道路建設予算をどんどん絞り込んだ。道路族は怒り、「藤井を総裁から引きずり降ろせ」という声が相次いだ。当時の小泉首相は、周囲から「今、藤井を切っても、藤井が正義の味方になるだけだ」と言われて、更迭を踏みとどまったという話を聞いたこともある。今、道路族は融通の聞かない藤井氏をこれ幸いとばかりに切り捨て、自分たちのコントロールが利く人物を新しい民営化会社のトップにすえようと狙っているという。
 その昔、政治部の大先輩が「日本の政治報道の痛恨事のひとつは、金権腐敗報道にある」と話してくれたことがある。金権腐敗は、構図がはっきりしている。「金もうけに目がくらんだ金権政治家は悪い」と書けば、とりあえず読者は納得してくれる。新聞社は長く、その構図に安住して、「どうしたら金権腐敗がなくなるか」という提言報道を怠ってきた。結局、日本の政治報道は批判記事ばかり、提言記事はちょっぴり、という自体を招いたのだという。
 別の先輩からは「自分が政府の一員になったつもりで、原稿を書きなさい」とも言われた。論理破綻したり、のぞき見主義的な報道は極力避けよう。昨日書いたここと、今日書くことに矛盾があってはいけない。「藤井氏を替えろ」と書くだけでなく、「なぜ替えなければいけないのか」「替えてこうしよう」という記事を書こう。締め切り時間は迫り、気持ちは焦る、という場面の連続だけれど、そんな記事を書かなくちゃと、改めて反省した。