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Report From ASAHI第十一回
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2008.02.28 "Report"from Asahi

Report From ASAHI第十一回

“Report” FromASAHI
第十一回「盧武鉉大統領」
 
 韓国の盧武鉉(ノムヒョン)大統領が6月初めに日本を訪問した。これが今、韓国内で「敗北外交だった」と猛烈な批判を浴びている。
 大きな議題は、核の開発疑惑で揺れる北朝鮮にどう対応するか、だった。強硬路線の米国と強調歩調を取りたい一方で、平和的に解決したいと考える日本の立場は、「対話と圧力」路線。これに対して、金大中前大統領の「太陽政策」を受け継ぐ盧武鉉大統領の政策は「対話による平和繁栄路線」だった。
 首脳会談の前、日本政府の高官に話を聞くと、「幾ら日韓関係が大事といっても、日米関係に勝るものはない。対話は大事だが圧力に触れないわけにはいかない」と話してくれた。
 でも、韓国側はそんな日本の姿勢を読み切れなかった。事前に麻生太郎自民党政調会長の「創始改名発言」があったり、日本の国会で有事法制成立が予定されたりしたことから、韓国では「日本は歴史認識や軍事問題で韓国側に負い目がある。北朝鮮問題で強く押せば日本は折れてくるに違いない」と考えたという。
 東京・四ツ谷の迎賓館で行われた首脳会談。経済や文化など幅広い分野で話し合われたと発表されている。が、実際は、「盧武鉉大統領が小泉首相に、対話路線を取るように延々と説得していた」と日韓外交筋の人が明かしてくれた。首脳会談は、事前に何をしゃべるか、事務方が応答のペーパーを用意しておく。会談後の記者説明は、そのペーパーに沿って説明されただけだったという。
 必死に訴える大統領に、小泉首相は「うんうん」と頷いたという。大統領は「説得が成功した」と思ったそうだ。ところが、会談後の記者会見で、首相が「圧力」にも言及。焦った大統領は「バランスが取れないと思って、対話路線を強調してしゃべった」と、後に同行の韓国記者団に明かしている。
 大統領は弁護士出身の在野政治家だ。外交に携わった経験は皆無だし、大統領のブレーンも若くて政府の行政に精通した人はほとんどいない。このため、外交戦略の事前準備が整わなかった。大統領は帰国後、保守層からは「米国訪問のときは強硬路線に転じると言っておきながら、また対話を言い出した」と攻撃され、元々の支持層からは「日本をもっと強く説得すべきだった」と責められている。
 大統領は訪問最終日に国会で演説をした。そこで、日本の有事法制に激しく反発する国内世論に配慮し、「不安と疑惑の目で日本を見守っている」という一文を加えた。ただ、これも韓国国内では「追求の仕方が手ぬるい」と批判を浴びているという。
 でも、大統領は最後まで「自分の周囲の準備不足が原因」などという責任転嫁はしなかった。
 訪日を終え、羽田空港に向う車中で、大統領はこう語ったという。「私の演説の手直しが、手ぬるいと言われることはわかっています。これから国に帰れば、私は強い批判を浴びるでしょう。しかし、演説であれ以上の発言をすれば、韓国と日本の関係は壊れてしまう。あれで良いと私は思ったのです」
 信念を貫き、その責任は全部自分が背負う。日本の政治家に何人いるだろうか。

朝日新聞社  牧野愛博