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“report”from ASAHI第十回
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2008.01.26 "Report"from Asahi

"report"from ASAHI第十回

“report” from ASAHI NO:9「首相官邸」
 
 5月10日(平成15年)から首相官邸に通うようになった。96年以来、7年ぶりの官邸詰め担当だが、舞台は大きく変わった。1929年に建設され、5・15事件(32年)や2・26事件(36年)の舞台になった旧官邸は今はなく、昨年4月から新官邸が登場した。地上5階、地下1階で、述べ床面積は旧官邸の2.5倍の二万五千平方メートル。首脳外交にふさわしい場とするため木や石、和紙などを多用し、「日本らしさ」も演出したそうだ。
 「ほー、こりゃ立派だ」と思ったのは最初だけ。次々に「戸惑う」事態が発生した。
 まず、IDカードを作らされた。これにはバーコードが入っていて、官邸に出入りするときは、必ず職員が私のカードに読み取り機を押しあて、「ピッ」とやる。まるで自分が野菜か肉にでもなった気分だ。昔もIDカードはあったが、「ピッ」はなかった。上司のデスクに愚痴をこぼしたら、「俺なんか記者クラブ員じゃないから、一ヶ月前から予約が必要だって言われたよ」とぼやかれた。
 官邸が崖に建っている関係で、1、2階が半地下構造になっている。1階が記者クラブと会見場、2階が食堂、3階が一般玄関とホール、4階が官邸スタッフ事務室、5階が総理執務室と行った具合だ。記者は1階から3階まで通じたエレベーターしか使えない。4、5階に行くためには別のエレベーターが必要で、これは常に官邸スタッフの警備の目が光っている。取材は3階ホールでしかできず、しかも普段は白いビニールテープが貼られた範囲内でしか待機できない。
 旧官邸はどこでも廊下なら行き放題だった。総理執務室の前まで押し掛けて、その前で総理が顔を出すのを「今か今か」と待ったものだった。本当かどうか知らないが、宮沢喜一首相に会いに来たブッシュ米大統領(現大統領の父)が、部屋の前にたむろする新聞記者を見て、「日本は情報公開が進みすぎているんじゃないか」と皮肉を言ったという冗談話を、先輩から聞いたことがある。
 今は執務室の前まで行けないから、総理がだれと会っているのか、本当のところはわからない。記者団の希望で執務室の前の廊下にモニターカメラを置いてもらったが、執務室前の廊下は二重廊下になっているため、カメラはあまり意味を持たないのだ。
 「政府の情報を何でも公開するのは如何なものか」と政府の要人は口を揃えて主張する。でも、情報公開大いに結構ではないか。旧官邸当時だって、首相は本当に秘密の会合をしたいときは、官邸を使わずにホテルの奥の部屋とか公邸を使ってうまくごまかしていた。
 逆に政府の情報操作が進む方が恐ろしい。記者は情報飢餓になるから、何が何でも政府要人に取り入ろうとする。ある日、官房長官の記者会見で女性記者が質問をした。長官がつれない返事をすると、その記者は会見後に長官に駆け寄り、「あんな質問をしてすみません」と謝っていた。なにをかいわんやである。北朝鮮や経済危機など、政府の対応が厳しく言及されなければならない場面が予想される時期なのに。「新しい官邸は記者を駄目にするんじゃないか」と政治部に復帰早々、気持が暗くなっている。