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“Report” from ASAHI第十四回
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2008.04.27 "Report"from Asahi

"Report" from ASAHI第十四回

“report” from ASAHI No:13 「内閣改造」(平成十五年十一月)
 
 9月22日午後一時半。首相官邸一階にある記者会見室で、私は同僚の記者4名と一緒に中央前列に陣取り、小泉第二改造内閣の新閣僚の入場を待っていた。
 まず福田官房長官が入場。閣僚名簿を読み上げる。その後に、新任と留任の閣僚16人の会見が始まった。何しろ、16人だ。午後四時半からは、皇居で認証式も控えている。実質二時間ぐらいで16人もの記者会見を次々とこなさないといけない。天皇に待ちぼうけを食わせるわけにはいかないから、司会をする内閣広報官も必死だ。事前に、「一人3分でお願いします」とクギを刺す。
 そうはいっても、こっちも商売だから、おざなりに「おめでとうございます」と話したってつまらない。毒の聞いた質問のひとつふたつ浴びせて、一体どういう内閣なのかを輪郭だけでもつかんでおきたい。
 事前に打ち合わせをして、共通の質問を2つぶつけることにした。総裁選のしこりが残り、政策というより人気優先内閣という顔ぶれであったため、同じ質問をして、反応のばらつきを見ようという作戦だ。質問は①総裁選の小泉公約を支持するのか?②道路公団と郵政の民営化を支持するのか?という内容にした。
 会見が始まった。中央紙のほかに地方紙も大勢詰めかけ、100人ぐらいの記者で会見室があふれている。3分という制限時間じゃ、質問なんか2つか3つが良いところ。他社に質問をさらわれるんじゃないか、と心配したが、決まったばかりの閣僚相手に何を聞いて良いかわからないのか、他社は殆ど質問しない。お陰で、朝日が7割ぐらいの質問を浴びせる格好になった。
 反応は様々でなかなかに面白かった。
 前政調会長の麻生太郎総務相は毒舌で有名な人。たまたま、昔、「麻生番」をやった同僚の記者が質問すると。ちゃめっ気たっぷりに「あなたの社名とお名前は?」。こちらが社名と姓を名乗ると、麻生氏は自分で記者の下の名前まで紹介して笑いを誘った。ただ、民営化の是非については、明確な答えは帰ってこなかった。
 中川昭一経産相は、実は前内閣でも入閣を求められながら、派閥の事情で断った経緯がある。そこを突かれると、「忘れた」。この人も民営化には明確な答えがなかった。
 小野清子国家公安委員長は、ちょっと寂しい会見だった。こっちが質問している端から、役人が用意した答弁要領(あんちょこ)をペラペラとめくっていく。何とか答えをごまかしながら、目指す答弁を探す。見ていてこっちがつらくなった。そう言えば、田中真紀子元外相は、国会答弁の時に答弁内容を理解できない人だった。相手が質問してくると、どの答弁を返してよいかがわからない。だから、彼女の答弁書には番号がふってあって、後ろに控える秘書官が小声で「5番、5番の答弁です、大臣!」とやっている。あるとき、同じ要領で秘書官が「11番です!」と助け舟を出すと、田中氏は答弁の冒頭、「11番!」とやってしまったという。「あの答弁書はちゃんと修正したんだろうか」という関係者のぼやきを聞いたが、これが歯切れが良いともてはやされた人の正体か、と寂しくなった。
 そのほか、次の参院選で引退が決まっている野沢太三法相は、答弁はしっかりしていたが、なにぶん耳が遠い。こっちが大声で何度も繰り返さないと、答えてくれなかった。「何でこんな人選んだんだろう」。どこかの記者がぼそりとつぶやいているのが耳に入った。
 すったもんだで二時間余。何とか会見は終わったが、「やっぱり、この内閣は人気取り内閣なのね」というのがこちらの感想だった。小泉首相がどういうポリシーでこのメンバーを選んだのか。その共通項は、私たちの質問からは浮かび上がってこなかった。
 小泉首相は今回の組閣の大半を、側近の秘書官と2人で決めたという。「小泉氏の特徴は人気を気にすることと、過去の自分の業績に対する批判を許さない、ということの2点だ」と解説してくれた政府高官がいた。
 確かに、今回の改造を見ると、小泉氏は青木幹雄参院幹事長や森善朗元首相が強く求めた「民間人閣僚の全員更迭」を頑強に拒み、一人を除いて全員留任させた。「自分がやったことは正しい」という判断からだ。安部晋三幹事長の起用は前者の理由にほかならない。
 今、見過ごしてはいけない点がある。イラクへの自衛隊派遣だ。首相官邸は派遣そのものが支持率低下につながるとみて、派遣決定を総選挙後に先送りする事を決めているようだ。私たちの取材では、行くこと自体はとうの昔に決断しているというのにだ。
 こんな大事なことを、絶好の機会である総選挙で有権者に問いかけずに先送りする。総選挙から年末にかけての、イラク派遣に対する政府の動きを見ていれば、この内閣の正体が随分と明らかになるのではないだろうか。