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“report” from Asahi No:19
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2009.03.05 "Report"from Asahi

"report" from Asahi No:19

“Report” From ASAHI No.19 「27本+2本の旗」
 
 3月、まるで初夏のような日差しを受けながら、台北市の中心部に建つ、横長で灰色の建物の玄関をくぐった。日本が1972年に断交した台湾外交部のオフィス。大理石が敷き詰められたホールに、ずらりと29本の旗が飾られていた。
 玄関脇の受付で、通訳の助手が手続きを済ませる間、旗のひとつひとつに目を凝らした。正面にある階段を挟んで、すぐ両脇の2本の旗は台湾を象徴する晴天白日満地紅旗。これはすぐわかった。でも、それから後が続かない。薄いブルーにワシの絵柄の旗、様々な星の模様がカラフルに描かれた旗・・・。台湾が現在、外交関係を持つ国々の旗だった。
 それでも数えたら全部で29本ある。エレベーターに乗るとき、助手に「今、台湾と外交関係がある国は27カ国だったっけ」と聞いてみた。助手は「あれ、そうだっけ?確か26だったような・・・」と考え込んだ。調べてみたら、昨年11月(記事は2004年5月時)に赤道直下の太平洋に浮かぶ人口8万人あまりのキリバスと外交関係を結んだことがわかった。
 外交部の廊下を歩いていくと、アフリカや中南米の民芸品がやけに目立つ。台湾の置かれた位置をはっきり見る思いだった。
 台湾には、自衛隊の企画の取材で訪れた。自衛隊のOBが台湾で大使館機能を持つ民間団体「交流教会」で働き始めたからだ。
 OB氏の大事な仕事のひとつが、台湾にいる軍人たちとの交流だ。「誰とお付き合いするんですか?」と聞いたら、「元軍人たちだね」という答えが返ってきた。
 現役軍人を台湾に送り込めるのは、外交関係がある27カ国だけだ。でも、27カ国は台湾の経済に惹かれて関係を持っている。軍事交流など意味がないのだ。だから、武器売買などのためにやってくる米国やフランスなどの「元軍人」たちと付き合うのだという。
 日本は台湾を30年以上にわたって国扱いしてこなかった。日本の外交政策上、良かれと思ってやった政策ではある。が、国扱いされないことのヒズミも確実に広まっている。
 数年前、台湾が米仏の新鋭戦闘機を購入した直後に、南西諸島付近で自衛隊機がスクランブルをかける事態が相次いだ。台湾の戦闘機が日本領空に近づいたのが原因だった。台湾の軍事専門誌の編集者が台湾の空軍パイロットに取材したところ、「せっかく新しい武器を手に入れたんだから、自衛隊のやつらに自慢してやろうと思った」と答えたという。
 那覇の基地で、スクランブル任務に就く自衛隊パイロットに同じ事を聞いた。彼は「税金で買ってもらった高価な官品を、そんな理由で動かすなんて信じられない」と絶句した。
 台湾総統選挙で、「独立派」と言われる陳水扁氏が再選された。自分を中国人ではなく台湾人と考える人が増えているという。それでも、台湾が本当の「国家」として脱皮できる日が来るまで、今しばらく時間がかかるような気がした。それは、台湾にも日本にも世界の国々にも少しずつ責任があることなのだろう。
 
朝日新聞社 牧野愛博(2004年5月)