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“Report” from ASAHI第19回
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2009.01.20 "Report"from Asahi

"Report" from ASAHI第19回

お世話になります、静岡県はASA沼津、佐野新聞店でございます。

新年初めての”Report” From ASAHIになります。2004年時の記事ですので、当時の韓国はノ・ムヒョン政権でした。今ではイ・ミョンバク氏に代替わりし、政策の変化も見られます。四年前の事象を思い出し、今の情勢と比べるのも面白いかと思います。それではどうそ。

“Report”From ASAHI No:18 「新しい韓国人」
 
 バレンタインデーの朝、東京都内のホテルオークラを訪れた。日本外務省の招待で来日した韓国政府高官に面会した。
 彼の名前はイジョンソクさん。国家安全保障会議の事務次長だ。元々は学者で、北朝鮮労働党研究では右に出る者がないと言われた。それがノムヒョン大統領に請われて政権入りした。最も信用が厚い側近といわれ、大統領と毎日会って意見を交換する。イさんの考えが韓国の政策に反映される場合が多く、今では、韓国の外交政策の事実上の責任者とまで言われる。
 ところが、このイさんの評判が、日本や米国では極めて悪い。私が昨年夏に会った韓国駐在の日本外交官も、イさんにまつわる愚痴をぶちまけた。曰く、「何度頼んでも会ってくれない」「米国大使館も、彼の顔を見た人間はいない、と文句を言っている」等々。直接会えないのでは、意見のすり合わせもできないから、当然、仲も悪くなる。
 さらに、北朝鮮専門家というイさんの肩書きも誤解を深める一因になった。日米両政府には、彼が大統領を動かして、日米を軽視した民族重視外交を展開しようとしているように映った。結局、ついたあだ名が「韓国タリバン」。原理主義者で融通が利かないという意味を込めたのだそうだ。
 今回の来日は、こうした誤解を解くためのもので、川口外相、福田官房長官、安倍自民党幹事長ら、政府与党の有力者と精力的に面会した。
 朝9時過ぎ、ホテル6階にあるスイートルームに入った。午後一時には羽田空港を出発するイさんは、2泊3日の強行日程の疲れも見せずに笑顔で迎えてくれた。
 韓国の外交政策、6者協議の見通しなどを学者らしく論理的に説明してくれた。インタビューはほぼ一時間。和やかに進んだので、終わりごろになって思い切って聞いてみた。
 「日本や米国に、あなたのことをタリバンと呼んでいる人がいるんですが・・・」
 彼はひときわ高い笑い声をたてて、「誰がタリバンって呼んでるの。そういう人がいたら連れてきてよ」と茶目っ気たっぷりに答えた。韓国の政策の正当性も一生懸命訴えた。事務次長という立場から、あまり表に出たくないのだとも語った。
 「大統領に影響力のある方ならば、日本の指導者と直接パイプを持った方が良いのでは」と突っ込むと「誤解があったのは事実です。対話を増やす努力をしたい」と答えてくれた。
 日本と韓国の距離は、映画やドラマなどを媒体に、最近急速に近づいている。けれども、政治家や外交官の間は、世代交代に伴って距離が遠のいているのが現状だ。昔は、戦前の日本占領統治の影響で、韓国や台湾には日本語を話せる人たちが多かった。政治家はそれを利用して交流を進めた。今、そういう時代は去りつつある。イさんも日本語はまったく話せない。
 ドラマや映画を通じた交流の熱気が、政治家や外交官にも早く伝染するといいのにな、と帰り際に思った。
 
朝日新聞社 牧野愛博(2004年4月)