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テレフォン説法第三十五回
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2010.01.30 テレフォン説法

テレフォン説法第三十五回

 テレフォン説法第三十五号(昭和五十九年十一月)

 

 テレフォン説法第三十五号をお送りします。今日のことばは「重い石を持つ」

 

 今ここに、大きな重い石と、小さい軽い石とがあって、どちらか一つを持って百メートル先まで運ぶとします。あなたはどちらを選びますか。誰しも軽い石の方へ手が出るのが人情です。少しでも楽をしたいのも偽らざる気持ちです。

 玉川学園の小原国芳先生は申しました。

 

 人生の最も苦しい 

 いやな 辛い 損な場面を

 真っ先に微笑みをもって 担当せよ

 

誰だって苦しい事、いやな事、損なことなど初めから判っていれば、避けたいのが本音です。それにも拘らず、微笑をもって之に当るのは、なかなか難しいことです。

 

 今年の夏、ロス五輪の入場式で栄光の旗手をつとめたのは、沼津出身の室伏選手でした。三十八才の彼にとっては、まさに最後をかざる男の花道であったでしょう。

 二年前、彼は次々に日本記録を更新しました。自分自身に重荷を負わせることの大切さ、その重荷に耐え続けることの素晴らしさを、室伏選手は鉄の球で宙に孤を描いて見せてくれました。「天声人語」はこう書いています。

 

 ハンマー投げは重さ7.26キロの鉄球を、できるだけ遠くへ飛ばす地味な競技です。室伏は自己の持つ日本記録を次々に更新して、遂に75メートルの壁を破った。新記録達成の瞬間をテレビで見ると、猛獣のような鋭い叫び声が響いて、鉄球は75mの白線を超えていた。

 

 両手を高々と挙げる室伏選手のうしろ頭の毛の薄さが年令を感じさせた。36歳といえばスポーツの世界では体力の衰えが目立つ年令であるのに、その重荷に耐え、逆に25歳当時の記録を4m以上も延ばしたのです。下り坂の体力を練習と技術上の工夫で見事にはね返しました。

 練習のとき自らに課す重荷はすさまじいもので、わざと握りにくい取っ手を選ぶ。向かい風の中で稽古をする。練習用の20キロ30キロのハンマーを投げる。バーベルも挙げる。厳しい練習が続くと、時には血尿が出るそうです。

 ルーマニアのやり投げ選手だったセラフイナさんとの国際結婚はもう十数年前のことですが、言葉も習慣も違う女性と暮らすことは、やはり「ひとつの重荷」を背負うことであったと室伏さんは言います。「しかし人間は自分に重荷をかけるべきだ。その重荷に耐えることが出来たら、一段上に成長してゆく。女房や子供のおかげで私自身も伸びられました」こう語っています。

 

 彼が72m88の新記録を出したとき「次は75mが目標です」とこの人は断言しました。この断言もまた室伏流にいえば、自分に課した一つの重荷であったのかも知れません。

 「重い石を持つ」というのは何もスポーツの選手だけではありません。あらゆる世界に通じることです。要は自分自身に打ち克つことによって商売に勝ち、仕事に勝ち、勝負に勝つことであります。

 「一人では何もできない。しかし先ず一人が始めなければ何もできない」と申します。その一人こそ、あなた自身であることを忘れないでください