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"Report" FromASAHI No:28
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"Report"From ASAHI NO:25
"report"from
asahi no:25「秘密任務」
夏の暑さが残ったある日、九州北部の郊外にある一軒家を尋ねた。自衛隊で電波傍受を担当した元自衛官の自宅だった。
自衛隊の電波傍受活動は長く、秘中の秘とされて来た。関係者は名刺を持つことも許されず、仕事内容を他言することは許されない。
東京・市ヶ谷の防衛庁には、電波傍受を担当する情報本部電波部が入ったビルがある。一階の回転ドアは、専用のIDカードを持っていないと動かない。情報分析用のコンピューターは、担当者が暗証番号を挿入して初めて起動する。担当者でさえ、コンピューターの中の情報を取り出すと、その記録が自動的に管理者に届く仕組みになっているという。
取材を試みたものの、これまでになく難しい仕事になった。乏しい情報から、あちこち関係者を訪ね、ようやく行き着いたのがこの元自衛官氏だった。
電話で「九州までお邪魔したい」と頼み込むと、「私は読売新聞しか読まないんだが」と言いながら、時間を取ってくれた。
朝5時に東京の自宅を出て、お昼ごろ着いた。自宅の場所がわからず、うろうろしていると、外まで出てきて迎え入れてくれた。和室の机を挟んで、ぽつぽつと語り始めた。
彼の仕事は、主に情報の分析だった。日本全国にある自衛隊の通信所が傍受した軍事通信の内容を整理する。ロシアの戦闘機パイロットと地上基地の更新、軍事演習の際に飛び交う部隊間のやり取り、発射したミサイルの弾道や着弾点を調べる観測船と基地の通信など。
自衛隊には「露華鮮」という言葉がある。日本の安全保障に大きな影響を与えるロシア、中国、北朝鮮の使用言語のことだ。自衛隊は専門の学校でこの「露華鮮」の語学教育を徹底的にやる。鍛えられた語学のエキスパートが傍受したこれらのやりとりが、東京の自衛隊の分析部署に送られてくる。そこで分析した資料が「電波情報」として、内閣や警察などに配布されるのだ。
こうした話を、自分の体験談を含め、慎重に言葉を選びながら、彼は語った。横で聞いていた奥さんがため息をついた。「そうだったの。あの頃、夜中まで帰って来なかったり、泊り込んだり、とても忙しそうだった。そういう仕事をしてたの」
家族にも明かせなかった仕事を、初めて会う私に語ってくれたことに軽い感動を覚えた。
取材時間は大幅に延び、気がつけば夕方になっていた。慌てて「東京に戻ります」と告げると、近くの駅まで車で送ってくれた。
「私たち自衛官は、長く日陰者扱いをされて来た。軍事機密は明かせない。でも、自分たちの仕事を知ってほしいという気持ちも強いんです」。駅で私の手を握りながら、彼はそんなことを言った。
9月21日の朝刊、「自衛隊50年 情報力」という企画で、彼の話を匿名で紹介した。感謝の気持ちを込めて、紙面は郵便で彼の自宅に届けた。
朝日新聞社 牧野愛博
